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いま改めて――広がる音楽的評価 [Column]

 ASKAの逮捕からもうすぐ8ヵ月が経とうとしている。彼を信じていたファンは奈落の底に突き落とされた気分で、絶望を味わったことだろうが、ファンから少し離れたところでは、徐々に彼らの楽曲に対する冷静な評価がされるようになってきている。良くも悪くも、騒動になり、注目されたことで、彼らの楽曲にも目を向けられることになった。ラジオ等を通しても、現役のミュージシャンが玄人目線で評価するようになってきている。そのことはこのブログでも随時紹介しているとおりである。

 何とも皮肉なことであるが、CHAGE and ASKAの楽曲は、今まであまり真っ当な音楽的評価に晒されてこなかった。その理由はいくつかあるが、少なくともASKAの逮捕・起訴によって、彼らに与えられていた特異な“イメージ”が解かれ、ある意味で純粋に“音楽”として聴かれるようになったわけである。

 楽曲の良さはもとより、コード進行や曲の構成、アレンジ等の先進性や、楽器の選択や歌唱法等の細部に至るまでのこだわり、あるいは制作サイドから見える野心などが、“音楽的に”評価されるようになった。実際、先に紹介したラジオでは、「SAY YES」などの大ヒット曲も、一楽曲として、その複雑なコード進行などが分析的な視点で評価されている。

 そんな状況にファンは喜びを得るが、一方で疑問もわき起こる。なぜC&Aの楽曲は、十分な音楽的評価をされこなかったのだろうか、と。その答えの一つとして考えられるのが、彼らも一時期インタビュー等で発言していた「イメージのダメージ」であろう。「SAY YES」「YAH YAH YAH」で大ヒットしてしまったがゆえの宿命とも言える。

 「SAY YES」の発売当時は、テレビにはほとんど出演していなかったが、“イメージ”の中では「テレビの人」となってしまい、それ以前にも「夜のヒットスタジオ」等でアイドル歌手と並んで歌っていた“イメージ”から、「芸能人」として扱われることとなる。昨年あれだけワイドショーが騒いだのも、ASKAが「ミュージシャン」ではなく、「芸能人」だったからだろう。(同じ「ミュージシャン」の岡村靖幸は、「ミュージシャン」以上の扱いはされないため、そこまで騒がれず、今もなお音楽的に高く評価されている。)

 「芸能人」ゆえに、バンドブーム以降のテレビに出ないタイプの“ミュージシャン”からは、あまり好かれず、音楽的な評価はされない。ユニコーンや斉藤和義、あるいはクドカンらが、逮捕時にライブでASKAを茶化したのも、そういった背景があってのものだろう。

 もちろん大ヒットにより大衆的な人気を得てしまったことも大きい。音楽性が少しでも変わるとファンは離れてしまう。結果的に、いわゆる「全盛期」以降の楽曲はあまり知られていない状態になっている。とりわけC&Aの場合は、意識的に異なるタイプの楽曲に移行していった。それを善しとするファンのみが、残ることとなったわけである。

 ただ、そのファンも、大衆的なヒット曲を入口にしたファンが多く、音楽に精通しているわけではない。「C&Aが好き」という理由でファンを続ける人が大半を占める。それゆえ、音楽的な評価をする「言語」を持たず、ローカルな場面(ファンコミュニティ)でもそれを展開することはできなかった。

 にもかかわらず、C&Aは変わり続け、新しいものを生み出し続ける。音楽的なこだわりもさらに強くなり、過去のヒット曲のおかげで経済的にも余裕のある環境で楽曲制作を行うことから、質は決して落ちない。十分音楽的に評価されるに値する楽曲を世に放ちながら、大衆的にも音楽通にも注目されず、ファンも自分たちの言語で音楽を語れないもどかしさを抱えながら、彼らを信じてファンを続けてきた。

 そして、あの一件。打ちひしがれた感にあるなかで、ようやくいまになって音楽的な評価がされ始める。実に皮肉である。

 先のラジオにもあった“ぶっ飛んでる”という表現には多少の嘲笑も含まれてはいるが、それを差し引いてもなお、ミュージシャンとしての楽曲に対する純粋なリスペクトがうかがえる。やはり楽曲は依然として一目置いた存在なのである。

 「楽曲に罪はない」どころか、ASKAの楽曲は実に罪深い。もっと質の低い楽曲なら、あの一件で葬り去られているはずなのに。あんなことをした。それでもなお評価せざるを得ない――。そんな楽曲を残した罪は非常に重い。彼には、もう一度、ファンにも玄人にも大衆にも評価されるような、質の高い楽曲を作る使命がある。それが彼のなすべき罪の償いだろう。

 依然楽曲の流通が制限されたなかで、今後もこの「楽曲への再評価」の動きが広がることを期待して稿を閉じる。

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