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ASKAの逮捕を受けて(1) [Column]

 5月17日午前11時半ごろ、ニュース速報によって、「ASKA逮捕」の情報が伝えられる。覚醒剤所持の疑い。われわれファンは大いにショックを受けた。“事件”から1週間。ファンサイトの管理者として、一ファンの率直な思いを書き記しておきたい。


 ただただ残念としか言えない。違法行為をした者を擁護する気になどなれない。かと言って、彼のすべてを否定することもできない。とりわけ彼の作った作品を、今回の“事件”にこじつけて否定することなどできない。われわれは、彼の作品にこそ魅了されてきたからだ。

 ファンの置かれた立場とその心境は実に複雑である。報道がされるたびにその度合いは増していく。

 「ASKAサンを信じてずっと待っていまーす」とも言えないし、「ASKAのバカヤロー!二度と聞くか」とも言えない。何ともやりきれない気持ちを抱えたまま、1週間が過ぎた。

 週刊誌が報じた情報をもとに、スポーツ新聞の記事が書かれ、それをテレビが紹介する。テレビのワイドショーは、彼の発表したこれまでの楽曲や活動、言動などを紹介しながら、彼が薬物に手を出した理由を憶測する。そのパターンはこうだ。

 (1) ヒットが出ないことへの焦り。(2) 作曲の行き詰まり。(3) 韓国公演の失敗と事務所の倒産。90年代、時代のスターダムにのし上がり、その後いかに落ちぶれていったかを物語化する。その落ちぶれと薬物依存を結びつけ、手に負えないヤツとして、とどめを刺す。

 「SAY YES」「YAH YAH YAH」以降、ろくに取り上げてこなかったテレビが、さもその後もずっと密着してきたかのような語り口で、その落ちぶれ過程を描き出す。ファンにとっては、そうしたテレビの態度に、怒りさえ沸き起こる。次々と明るみになる薬物依存の状況に動揺すると同時に、テロップの誤記や、年代などの事実関係の間違いに対して「そこ、違う!」とツッコミを入れたり、「物語」はこうして作られていくのかと感心したりするなど、ファンゆえに冷静な自分もいたりする。(C&Aが中学の同級生という誤情報をはじめ、ひどいところは、ASKAの作った曲と紹介しながら、「作詞:CHAGE」になっているという、とんでもない間違いのまま堂々と放送する局もあった。)

 何が原因なのかは本人にしか分からないし、おそらく今の彼に語らせたところで、それが本当の原因なのかはもはや分からない。今の彼にとって、あるいは取調官にとって、腑に落ちる(説明のための)動機として語られるものでしかないからだ。

 にもかかわらず、理由を欲しがる。物語化したがる。そうしないと、逮捕という現実を肯定できないからだ。「事実」は、「物語」を通して、事後的に作られていく。

 手っ取り早い「理由」は、ヒットが出ないこと。表面的な数字、つまりCDの売上を追っていけば、“落ちぶれ”具合が客観的に描き出せるからだろう。しかし、われわれファンからすれば、どうもそれは的外れに思う。もちろんそういう意識は当然あっただろうが、ヒットを狙いに行くことのかっこ悪さを、2000年代初めごろには何度も語っていた。それは彼ゆえの強がりなのかもしれないが、それ以前に、CDの売上の低迷はC&Aに限った話ではなく、そもそもCDじたいが売れない時代に入っていたという社会的背景による影響のほうが大きい(日本のCDの売上は1998年をピークに右肩下がりになっている)。むしろ、C&Aはデビュー当時から、レコードセールスは伸びないのにライブの動員がすごいと業界内でも評判だったと聞く。それはヒット曲が出なくなった以降も同じである。そのことは、当サイトでも繰り返し伝えてきたとおりである。

 第二の「作曲」についても、彼のファンならよく知るとおり、否定できる。彼が苦悩していたのは「作曲」ではなく「作詞」のほうである。曲はすぐにできるが、歌詞に時間が掛かる。ここ15年ほどはとくにその傾向が強くなっている。彼もインタビューで答えているように、歌詞を書くのに時間を要し、深夜や明け方まで集中力を切らすことができない。そのために彼は「アンナカ」を使ったと言っているが、それがおそらく「アンナカ」ではない違法薬物であった可能性は、“事後的に”推測できる。

 そして、最も不可解な理由が、韓国公演の“失敗”である。これも韓国公演のあった2000年に行われたライブ<GOOD TIME>のMCで伝えられたとおり、虚偽の情報である。失敗とか成功とか、黒字とか赤字とか言う類いの話ではなく、そもそもあのライブは、大統領夫人の慈善団体が主催したライブであり、C&Aサイドが「興業」として行なったライブではない。直前までチケットの売れ行きが悪かったのは事実かもしれないが、アジア圏のライブでは前日や当日になって急に売れることもあり、韓国に至っては日本語が解禁されていなかったため、プロモーションもできていなかった。仮に客入りが悪かったとしても、損害をC&Aサイドが被るものではない。あくまでも「興業」ではないからだ。

 当時の所属事務所は「リアルキャスト」という名の会社だったが、この会社じたいが、ヤマハ音楽振興会の一事業部として存在していたような企業である。音楽振興会は財団法人のため、営利活動を積極的にできないことから、作られた事務所だと考えられる。このリアルキャストも参画して、2000年にはヤマハグループのレコード会社「ヤマハミュージックコミュニケーションズ」が創業している。当時、CHAGEもASKAも役員に名を連ねていた。この会社が軌道に乗ったことで、翌年、C&Aは円満にヤマハグループから独立している。独立のために統合された会社が、リアルキャストが合流した「ロックダム」(のちの「ロックダムアーティスツ」=現・所属事務所)である。

 内部事情は不明であるが、「韓国で失敗し、会社が倒産」というのは事実ではなく、仮に事実であったとしても、それと薬物を結びつけるのは、強引すぎるだろう。

 ファンからみれば、これらの“理由”は説得力に欠く。「SAY YES」「YAH YAH YAH」以降もちゃんと見てきたファンからすれば、それよりも「声が出なくなったこと」を原因に挙げるほうが説得的である。薬物によってそれが改善されるものかは分からないが、彼自身がずっと悩んできたことと言えば、まず思いつくのは「声」である。

 1999年の<電光石火>ツアーや<千年夜一夜ライブ>、その前のテレビ出演の映像などを見ても、声が出にくくなっているのが分かる。2000年の韓国ライブはそういうものを超えた気迫が感じられるのであるが、以降2002年から2003年ごろが最も苦しい感じで歌っている。しかし彼は、ずっと(2001年から2004年まで累計220公演以上)ライブをやり続けたことで、再び声が出るようになったと説明する。声帯の使い方を変えたとも言っている。確かに2007年の<DOUBLE>ツアーや<alive in live>の声の出方は半端ない。「SAY YES」などの頃の甲高い高音こそないものの、低音が響くようになり、厚みが増している。CHAGEのハモリとの調和も絶妙で、日本を代表するデュオに相応しいハーモニー(ぶつかり合い)になっている。当時まったくテレビに取り上げられることはなかったが。

 その後のソロ活動への専念(2009年、C&A活動休止)も、この「声」の復活が大きく影響しているようにも思える。ソロとしてやれるとこまでやってみたいと思えるようになるほどの声の復調があったからだと。歌詞のほうはその後もなかなか復調と呼べる状況にまで至らなかったようだが、2012年に発表した7年ぶりのソロアルバム『SCRAMBLE』は、第何期目かのASKAの代表作と言えるような出来であった。声も出まくり、詞の世界も壮大で、ソロの集大成と言うべきものだった。これを発表したことにより、いよいよC&Aの復活が来るというのも、それなりに納得できたものであった。ただ、残念なことに、テレビではその間の活動が取り上げられることもなく、2009年の解散騒動以後、今回の薬物報道を待つまで、ASKAが大きく注目されることはなかった。

 そうしたもどかしさをファンはずっと抱えてきた。それは「SAY YES」以前のファンならもっと大きいだろう。曲は良い、ライブも動員する、でもヒットは出ないし、さほど注目もされず、評価もされない。「解散」が騒がれるときだけ注目される妙なグループであり、それは「YAH YAH YAH」以降とて同じである。でも、今回、改めて聴いてみると「良い曲が多い」との評価が沸いている。こんなことがなければ注目されない、評価されないというのは、ファンとしては実に複雑である。

 何より残念なのは、今まさに注目され、評価がされているときに、曲を聞く手段が断たれることである。逮捕をもって一斉にCD・DVD・配信音源等の販売が中止となり、結果として転売屋が儲る事態に。残念な思いはさらに募るばかりである。(続く)
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バレンタイン大作戦(C)

ツイッターから来ました。僕はその韓国公演にTUG OF C&Aから参加しました。当時10万円近いお金をTUGに支払って参加した記憶があります。
ご存じの通り、ASKAさんが声にならない有名なあのシーンがあるあの公演です。
現地では2階スタンドが我々日本からきた日本人ファンで埋め尽くされました。韓国公演の横断幕をもって記念撮影したりするファンがバスで何十台とあったようにおもうのでまず間違いなく2階スタンドの日本人ファンはFC経由だっと推測されます。そして1階のアリーナ席は韓国人のファンの方で埋め尽くされていました。
一部報道ではチケットをバラ撒いたとありますが、それはどうなのか疑問に残ります。何より、ライブは失敗したと報道されていますが、自分が見てきたライブの中でも1,2を争うほどの素晴らしいライブでありました。

「SAY YES」で韓国人ファンと日本人ファンが1つになり感動したのを覚えています。そして当時声の調子が悪かったASKAさんが歌ごとに声が出ていくのをはっきりと覚えています。

マスコミが言うライブの成功や失敗とはいったい何か。
彼らは日本を代表し、韓国との深い溝を埋めるべく、選ばれしアーティストとして親善大使として韓国にいったんです。日韓の架け橋と当時は報道されました。今になって失敗というのは理解ができません。


もし収入的に失敗をしたというならば、そこにも疑問が上がります。

1 日本から行ったファンがとても多かった。
2 そのほとんどのファンはコンサートグッズを買いあさった(自分も2~3万円分くらいは買いました)
3 倒産するほど金銭が回らないという割には、行けなかった日本人に対してDVD等の販売がない(出回っているのは海賊版で正規のDVDはありません)

過剰報道というか、数字や部数が売れれば、多少盛り込んで書こうが売人を野放しにしようが関係ないと思われるマスコミは卑劣で最低だと思います。
by バレンタイン大作戦(C) (2014-05-27 09:35) 

クイン

初めまして。
人づてに聞いて、こちらを拝見させていただきました。

過去の事実と現状をしっかり捉え、
冷静かつ、ファンとしての熱も併せ持たせた、
非常に”伝わってくる”文章で、感動すら覚えました。

本来、メディアこそこういった視点から情報を届けなければならないのに、
インパクトとお手軽さ重視の垂れ流しのみというのが、
怒りよりも悲しさを感じてしまいます。

わたしは、
今はただ、ASKA本人が誰に対し何を、どこまで話をしてくれるのか、
それだけを待っています。
by クイン (2014-05-27 12:12) 

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